日本では聞いたこともないパーボイリングという用語。
スリランカやインドなどはかなり古くから行われており、何百年も続く米の加工技術です。
アメリカやヨーロッパ、アフリカ、中東など多くの国で生産されている。
世界的には一般的なようです。
パーボイリングとは
細くて長い米の種類であるインディカ米に対して行う処理で、様々なメリットが得られる。
パーボイルド加工は多くの国で行われており、方法は色々ありますが最も古典的な処理方法を知りましょう。
特別な施設がなくても鍋とシートで加工できる。
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1吸水させて炊く
米をもみ殻の状態で水に浸して一晩吸水させておきます。
翌朝、高温で蒸しあげて炊きます。
もみ殻の中でご飯が炊けるわけですね。
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2冷却と乾燥
シートやマットの上に広げて冷却と乾燥をさせます。
一度炊いた米は全体がデンプンでおおわれてふっくらと炊き上がりますが、そのあと冷却と乾燥をさせることで、もみ殻の中のコメは全体がカチカチの半透明のガラス質に覆われます。
服にくっついた米ってカリカリに固まってますよね!あの状態です。
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3脱穀する
乾燥したらもみ殻を取り除いて保存します。
玄米の状態ですね。
パーボイリングするメリット
インディカ米の持つ弱点を補うことが出来る処理で、それ以外にも利点が数多くある。
精米しやすい
インディカ米は精米するときに割れやすいうえに皮が取れにくいという特徴があるのですが、一度蒸しあげて再び冷やすことで、米粒全体が糊化したあと硬化します。
そのため、精米の際に割れにくくなります。
粉々になってロスするコメが大幅に減るわけです。
さらにもみ殻が取れやすくなるので、一度の精米でキレイに脱穀できちゃう。
栄養価が高まる?
驚いたことにこの処理によって栄養価が変化するのだ。
理由としてはとても簡単!
もみ殻のまんま水に入れて吸水することで、米ぬかにあるビタミンやミネラルが溶け出して、浸透圧によってコメの内部に入っていくからだ。
米の栄養素の95%は糠にあると言われているので、玄米の良さを持った白米です。
これによって何もしないで脱穀するよりも栄養が失われないのだ。
ビタミンが移行した影響で米はちょっと黄色になります。
栄養の流失も抑える
インディカ米はサラダに入れたりしちゃうこともあるんですが、その場合炊いた米を水で洗って使ったりします。
パーボイルドすることで加熱するので、栄養成分はデンプン質によって固定されるため、洗っても栄養が流れにくくなるメリットもあります。
保存性がよくなる
めちゃくちゃ保存性がよくなって味や食感が劣化してしまうのを防ぐことができるので、2~3年経っても美味しさが落ちないと言われています。
ほんとかよ!パーボイルド処理すごいな!
虫に強くなる
パーボイルドされることで米は硬化するので、米を食べようとする虫に対して強くなります。
酵素が止まる
米の中には酵素があるので収穫したら時間と共に、脂質が分解されて古米のニオイが出てきます。
一度蒸しあげることで米の中の酵素が壊れるので、米が変化しにくくなり貯槽性が増します。
吸湿性が低くなる
米全体がデンプン質が硬化してガラス質に覆われたので、湿気を吸いにくくなっていて保存性がアップしています。
美味しくなる
パーボイルド処理することで米粒は弾力が出て、形がしっかりしたお米に変化します。
そのため調理しても型崩れしないし、仕上がりはパラパラでべたつきはなくなる。
ビリヤニやパエリア、お米サラダにも最適。
また、炊いた後のお米は長時間経っても粘っこくなったり、酸っぱくなったりしにくくなる。
料理しやすくなった
半分調理済のようなものなので、炊くときの時間も非常に短くて済みます。
ほとんどの場合、10~20分程度茹でたら食べられます。
また、短い時間で吸水性もしっかりとあるのでリゾットのようなスープを吸い込んで欲しい料理にも最適です。
伝統的な方法はデメリットもある
発展途上国なんかでは大鍋に米を入れて水くわえて吸水させ、薪をくべて加熱します。
そのあと大地に広げて太陽で乾かす。
熱くなるのでアスファルトが利用されたりする。
こういった古典的な方法で今もパーボイルド処理が行われていますが、いくつか弱点も存在します。
ちょっとニオウ
米を水につけておくことで吸水させますが、長時間常温の水につけることで微生物や菌が増えるのでニオイが発生してしまいます。
浸けておく時間を短くすると中心部まで吸水できない。
お湯にすると米の栄養成分が流れ出てしまう。
割れやすくなる
天日干しにすると一切費用がかからないが米が割れやすくなる。
乾燥機だと短時間で乾燥させることが出来るが、米の内部と外側では乾燥ムラが起こる。
乾燥ムラは脱穀の際にあまりよくない。
当然費用もかかる。
若干減る
簡単に予想ができると思うが、強風が吹いたら米粒が飛んでしまうし、屋外なので鳥が若干盗み食いしてしまう。
異物が混入する可能性も十分にあるだろう。
はぜかけ
日本ではこのように米を乾かすので飛んでいったり、異物が入ることはないが、パーボイリングするならばやはり稲穂からとる必要が出てしまう。
現代のパーボイルド米
先進国だと地面に米を広げたりしていませんし、小石が混じることも鳥さんが盗んで減ることもありません。
革新的な方法で工場で処理されるから数時間で製品化されます。
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1水分を抜く
もみ殻付きの米をタンクに入れたら中を真空にします。
こうすることで加熱しなくても水分が蒸発して抜けていきます。
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2吸水させる
思いっきり水分を抜いた後に高温の蒸気と圧力をかけて水分を押し込みます。
短時間で吸水させられて、浸け置き水に栄養素が流れ出ることはなくなり、もみ殻や糠にある栄養素のほとんどが米の中に浸透していきます。
高圧力の蒸気でしっかりと加熱して糊化させることができます。
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3脱穀する
パーボイルド処理した米は脱穀も簡単!スルッと剥けるし、硬いからお米も割れにくい。
通常の脱穀機で普通にできるので特別な機械もいらない。
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4製品化
真空パックに詰めて箱詰めして製品となります。
消費期限はパッケージには製造から26カ月と書いてあり、真空パックになることでさらに長く保存できるようになります。
まとめ
パーボイルドライスはインディカ米の特徴にあった処理方法で様々なメリットが得られます。
栄養価が高まり、保存性も良くなります。
日本のような丸いお米であるジャポニカ米でもパーボイルドされていて、リゾットにするとスープをよく吸ってアルデンテに仕上がるので重宝されています。
私たちは知らなかっただけですが、どうやら生米をリゾットにしていたわけではないようです。
どおりで洗わないし、火が通るのが早いなと思っていました。
パーボイリングはチャーハンなんかには適していますし、保存性が良いので非常食としての加工方法としても採用されるかもしれません
いつの日か日本のスーパーでも登場する日が来るかもしれない。